今の時代に合わないと思われるかもしれませんが、ある程度ハードな仕事をした経験と言うのはその人のバックボーンとなり、多少の事でも物怖じすることなく冷静に対応できるようになると考えています。
以前、外資系で働いていた頃、米国との電話会議がよくあり、その会議は日本時間の朝7時からが多く、朝5時に起床し6時30分には出社、ということがよくありました。
会議資料の作成や問い合わせの対応のため、夜中でも会議前までに資料を作成しメールで送付、その後電話会議に望む、といった具合でした。
妻が日曜日の夜に産気ずいてしまい、夜中の2時ごろに一緒に分娩室に入ったは良いものの、翌日の会議資料を米国にメールで送付しなければならなかったため、妻が陣痛で苦しんでいる傍で、分娩室で米国に資料をメールしたり、子供が生まれてからも毎日終電過ぎまで仕事をし、タクシーで帰宅(もちろん自腹)するなど、毎日の睡眠時間は2-3時間という時も結構ありました。時に来日している米国人の社長から会議中に3時間立ちっぱなしで罵声を浴びせられる、などなど中々なハード(ブラック?)なことをしていたことをよく覚えています(今はちゃんと家事も子供の世話もできてると思いますが)。
そういった生活の中、当時は「なんでこんなに大変なことをしなければならないのか?」と愚痴ばっかりこぼしていましたが、今、考えてみるとその経験があったからでしょうか、現在は多少、仕事が立て込んできても楽にこなせるようになりましたし、気分的にも余裕が生まれ、焦ることもほとんどなりました。
さて、とある日、
入社3年目のF君が仕事が多すぎるということでパニックになっていました。
パニックになるほどの仕事量ではないかな、と思いつつ、話を聞いてみると彼が持っている複数の仕事が同時並行的に進んでおり、何から進めていいかわからなくなっている模様。仕事が片付かない状態が続いていたため、業務が減らずパニックになっているようでした。
仕事の内容を確認すると、
- 月末までにAの資料の作成
- 今週中にBの書類のチェックとお客様への連絡、今後の業務の調整
- 今週中にCのデータの確認、Cに関するDについてのヨーロッパへの問い合わせ
- 今週中にEの契約書の確認、
確かそれなりの仕事が並行して進んでいるように見えました。 ただ、優先順位をつけたり、他のメンバーへ協力を仰いだり、仕事の配分を考えれば、問題なくクリアできる範囲の仕事の量かとも思われました。
そこでF君がどのように仕事をしているかを確認しました。
すると、午前中に片付ける事ができる仕事であるにもかかわらず、今は必要のない仕事にまで手をつけているようでした。
具体的には、CCのメールまでいちいち目を通していたり、電話で結論の出ない会話を30分以上も話していたり。そうこうしているうちに午前中が終了。そして午後に午前中に行う予定だった仕事を開始し、午後に予定した仕事は終わるはずもなく、終業時間となりそのまま残業。しかしながら、完遂できずに1日が終わる、それが常習化しているようでした。
今、すべきこと、優先順位をつけることができていない感じです。
F君が忙しいのは『仕事の量』の問題ではなく、『仕事の質』が悪く、今、必要のない仕事をしていたため、本来行うべき仕事の時間がなくなってしまった、ということです。
また、Hさんもいつも忙しいと言っておられました。 Hさんの仕事量は先のF君に比べて半分ぐらいしかありませんでしたが、毎日毎日忙しいと口癖のように言っておられました。
Hさんは、通常なら配送業者が行う製品の搬入や搬出をご自身でやっておられました。理由を伺うと「その方がお客様と面会しやすくなるから」でした。確かに直接運ぶわけですから「面会」はし易くなります。
しかし、『面会が必要な仕事がある』のであれば、その仕事のついでに搬入をすれば良いわけで、『搬入のついでに面会する』というのは本来、面会が必要な仕事では無いわけです。にもかかわらず面会するというのは、「面会されるお客様の貴重な時間を奪う」ことにつながるのですが、それを理解していません。
また、地域によっては 搬入/搬出には丸々1日移動に費やされてしまうことがあります。週に一回、搬入/搬出のために1日を費やしてしまえば、1週間の稼働日である5日のうち、1/5=20%もの時間が異動に費やされてしまいます。そのため残りの4日間に仕事のしわ寄せがきて忙しくなるのは当然です。また、搬入するために通常ルートと違う特別な事務手続きも発生しており、自分で搬入することによって、自分自身、お客様、そして社内のスタッフなど、たくさんの人々の貴重な時間を奪っている事を理解して頂けませんでした。
仕事の優先順位をつけることはそんなに難しいことではなく、そのタスクの重要度、かかる時間、どれだけ関連する人々がいるかなどを考慮し考える事ができます。
そのタスクの重要度、かかる時間、どれだけ関連する人々がいるかなどを考えると、これらの仕事がどこで「律速」になるか理解できるようになります。仕事の優先順位はその「律速となりそうな点」を早めに解決するようにすれば、スムーズに進めることができます。
時間は有限です。仕事だけでなくプライベートも含め、時間は有効活用したいものです。
皆さんはいかがお考えでしょうか?
まとめ
- 仕事の優先順位は、そのタスクの重要度、かかる時間、どれだけ関連する人々を考慮し決定していく。
- 仕事がどこで「律速」になるか理解する。仕事の優先順位はその「律速となりそうな点」を早めに解決すること。
- 自分の都合の良い仕事のやり方によって、自分自身、お客様、そして社内のスタッフなど、たくさんの人々の時間を奪っていないかを考える。