売れない製品を売り込むことがセールスの仕事であることは間違いありませんが、それを売れるようにするためにはマーケティングのシステムを構築する必要があります。
自社に多くの製品がある中で、自身が担当する製品をセールス担当者に売ってもらうためには、彼らのモチベーションを高めることが非常に重要だと考えています。
セールスのモチベーションを高めるとは、すなわち「これを売りたいと思ってもらえるか」ということです。
20代後半の頃、新製品の導入に伴い、夜遅くまで働きながらあれこれ考え込んでいました。会社からは「売れるものを作れ」「セールス担当者が簡単に売れるものを作れ」と言われ、毎日イライラしていたことを記憶しています。
当時の私は、「簡単に売れるものは誰でも売れるでしょう?、勝手に売れるでしょ? だったらセールス担当者は必要ないよね?、アルバイトでもいいよね?、だって簡単に売れるんだから。セールス担当者は売るのが難しくて売りにくいものを売るためにいるんでしょ?」と考えていました。
そのころ、私は製品の発売準備のためにカタログの作成、ローンチパケットの作成、支店での製品勉強会などの仕事を行っていました。しかし、今、思い出すと当時の私は具体的な販売方法や戦略を考えることをしておらず、新しい製品がでれば「こういう製品が出たので売ってきてください」と伝えていただけでした。
この製品がどういった理由で開発され、どういった方に使っていただきたいのか、競合製品との差別化はどういったところにあるのかなど、販売するための戦略も具体的プランも何もありませんでした。
その結果、上市はしたものの全く売れませんでした。それはそうです。製品コンセプトを開発した私本人が理解をしていなかったわけですから。
しかし、当時の私は売れないのはセールス担当者の販売方法が悪いせいだ、と考えていました。今考えると非常に自己中心的な考え方ですし、売れなかったのは私自身の戦略の無さのせいであったと痛感しています。
セールス担当者は売りにくいものを売ってくれる。それに対し、私はセールス担当者が売りやすいと思ってくれるような情報や環境を整えることをしたのか?
新しい製品とはいえ、基本的に市場には競合が存在することが多いと思います。その中でセールス担当者に「自社の製品は競合品よりも優れた価値を持ち、勝つことができる」と思ってもらえることができれば、売りにくい製品→売りやすい製品に考え方を変えてもらうことができるでしょう。そのためには、どのような情報が必要だったのでしょうか。
例えば、少なくても以下のような情報が必要かと思います。
- 市場分析
- 競合他社との比較
- 自社の強みと弱み
- 顧客が抱える課題やニーズ
- 自社製品がどのように問題を解決できるか
- 顧客への提案方法
- 解決することで顧客にもたらされるメリット
- 顧客のニーズや問題点をまとめたFAQ集
- 販売促進資料の作成
など。
少なくてもこれらの情報をセールス担当者に提供し、製品の価値を提供できれば、「これ、売れるんじゃないか?」と感じてもらうことができ、セールス担当者のモチベーションも高まり、結果、自発的に販売活動を行ってくれたのではないでしょうか?
上述はマーケティングの基本的な考え方だと思いますが、これが自分の仕事だと気づくことができなかったんですね。
色々な仕事を通じて「売れない製品を売るのがセールス担当者の仕事」という考え方ではなく、売れない製品を「セールス担当者が売りやすくするために、売れる製品に変える」マーケティングがあってこそ製品が売れる、と今は感じています。
皆さんはいかがお考えでしょうか?