製品開発を行っていると、開発の遅れや工場移管などがうまくいかず、ローンチが遅れることがあります。
その場合、セールス側が望んでいる時期を確認し、可能な限りベストケースでの販売日を再構築してもらえればよいのですが、現状の開発状況から安全域をとった上で発売日が延期されるケースがあります。
皆さんはどう思われますか?
例えば、クリスマス商戦に導入予定だった製品を翌年2月に販売して期待通りの売り上げが得られるでしょうか?
保険をかけるように遅らせるケースを経験することもあり、どうも「機会損失」を理解していないように感じます。
さて、機会損失とはなんでしょうか? 機会損失とは、
- ある意思決定をしないことで利益を得る機会を失い、それにより生じた損失
- 本来ならば得られるはずの機会(利益)を得られなかったことによる損失
を指します。
例えば、月100個を売り上げる製品があり、それを1月1日に販売を開始したとします。非常に単純な売上におけるマス計算を示します。
その販売の前提条件として、
- ここでは、製品のリピート率は「1」とし、1月に各お店に販売した100個はそのまま毎月12月まで継続的に100個売り上げが回転するとします。
- 2月以降、新規の販売数は同じく100個とし、リピート率も同様とする。
1月は100個売り上げ、それが12月まで継続。2月も新規で100個売り上げ、それが12月まで継続。3月も100個で以下同様です。とすると、売上数量は単純に下記のように表で表せます。
1月分は12回転、2月分は11回転し、3月分は10回転するので、12ヶ月間でトータルは7,800個となります。これが上述の条件における販売数量となります。
マス計算では、1年間のマスの数は78マスとなります。もし、2ヶ月遅れの3月に発売された場合、どのような計算になるでしょうか?
3月1日に発売され、それが12月までに回転、4月の100個売れ、それが12月まで回転、以下同様とすると下記の表のようになります。
表としては単純に2ヶ月ずれ込んだ表となります。これは、何を示しているでしょうか?
「遅らした側」から見ると、「たった2ヶ月遅れただけ」です。発売時の売り上げ数量も100個開店するわけですから、1月の100個と2月の100個が予算から遅れただけ」程度に思うかもしれません。
しかし、予算は前期の時点で組まれることが通常です。会社では、1月1日に販売する予定で予算を組んでおり、7,800個の予算を組んでいます。しかし、2ヶ月遅れるということは、その分の回転する製品の売上、すなわち、本来11月と12月に予定していた黄色に示した部分の売り上げがごっそり無くなるわけです。
たった2ヶ月の遅れ、そう思われるかもしれませんが、2ヶ月遅れたことで、そもそも11-12月に売上を予定していた売り上げ個数11月の1,100個、12月の1,200個、合計2,300個の売上減であり、予算上は、29.5%(2,300/7,800個分)、おおよそ3割も予算からこぼれ落ちるわけです。すなわち、年度の売り上げのおおよそ3割をショートしたことを意味しています。
これが「機会損失」です。
「いや、翌年の1月と2月に結局同じだけ売れるから2ヶ月ぐらい遅れても問題ないですよ」
そういった意見もあるかもしれません。
しかし、上記の計算は、市場の変動、本来の製品の回転率、季節性により売上の変動などは考慮していません。また下記のような売上に左右するリスクも考えられます。
- 時期を逸して、打つべきプロモーションが行えない可能性がある。
- 円安による原料価格の上昇による利益率の低下
- 競合他社製品の価格戦略による販売価格の下落
- 競合他社新製品の参入による販売数量(回転率)の減少
- 他社製品参入による、チャネルの変化
など。
たった2ヶ月と思うかもしれませんが、製品導入の遅れは大きな機会損失を引き起こす可能性を含んでおり、開発者だけでなく、マーケティング担当者もしっかりと理解した上で、その後の戦略を考える必要があります。
2ヶ月という期間は大したことがないよ、そう見えるかもしれませんが、たったそれだけの期間でも重要な機会を逃す結果となりかねないのです。
皆さんは如何お考えでしょうか?