【コスト削減は費用対効果を考えて行うべき】

最近ではどこの会社でも利益を確保するため、以前にも増して経費削減が叫ばれるようになってきました。確かに無駄な経費の削減は非常に重要かと思いますが、一方で経費を削減した結果「安物買いの銭失い」のようになってしまうケースも目にします。

会社で何らかのシステム、例えば精算システムやメールシステムを導入する際にも、システムにはできるだけ経費をかけずにできるだけ安く仕上げようとする傾向があります。また、仕事を外注する際も安価で引き受けてくれる会社に発注し、できるだけコストをかけないで進める、といったケースもよくあると思います。それはそれで正しいとは思うのですが、コストカットすることによって費用対効果が逆に悪くなるケース、さらには売上に大きな影響を与えるケースもあります。

 例えば、ある新しい製品を販売する上で必要なシステムを導入するため、6ヶ月間の納期で1,000万円かかるシステムを導入するとします。おそらくサラリーマンの方であれば、このシステムの導入担当者は、まず第一に1,000万円のコストをもう少し削減できないか?を考えるのではないでしょうか?

例えば1,000万円の初期コストが800万円に削減できたとすれば、200万円(20%)もコストカットを達成したわけですから、上司からは評価されることになるでしょう。表面的にはコスト削減に貢献できたわけですからね。会社の経費は決まった分しか使用できませんし、コスト削減は別に間違った対応では無いと思います。初期費用を抑えることは、会社では一般的な事だとは思います。 

しかし、一方でシステム自体の経費を削減したわけですから、本来はこのシステムに組み込まれる予定だった何らかのプログラムだったりシステムを簡素化したり、本来は100%のはずのシステムが80%の完成品になっている可能性もあります。システムの作成会社は売上が減少するわけですから、そのシステムを作成するための経費、すなわち人件費や開発費を削減することになります。その結果、そのシステムの質の低下、人件費削減からくる作業員調達の問題などにより、本来の納期から遅れる可能性も考えられます。

もともと、ある製品を販売するためのシステムですから、ある程度の経費をかけてでも、競合が参入してくる前に一日でも早くlaunchし大きなシェアを獲得できれば、他社の参入障壁が上がり継続的な売上・利益を確保でき、結果、初期費用であるシステム開発費も十分回収できるはずです。

AとBをカットしたので費用はこれだけ削減できました。しかし、できあがったシステムを使って見たら思ったより使い勝手が悪く、余計な手間が1つ増えてしまった、さらに経費を削減したので納期が遅れ、製品のlaunchが遅れてしまっては削減した経費より多くの売上・利益を失うことになるわけです。

日本企業では、一時的な出費をケチってしまい、本来目指していたものと違うものができてしまう、結果的に必要な効果が得られなかった、ということは往々にしてあります。経費をケチってしまうことで「安物買いの銭失い」となっていることに気づかない、もしくは気づいてはいるのですが経費を抑えることが目的となってしまい、本来の売上・利益を上げるという目的が忘れ去られてしまっていることがあるのではないでしょうか? 

もし、売上・利益を上げるという本来の目的を完遂しようとした場合、初期費用の1,000万円は妥当だったのでしょうか? 

例えば、1,000万円で作成するシステムに加え、更に効率化を促進できる改善プログラムを追加すると、500万円の追加費用が掛かったとします。 しかし、この500万円を追加することによってlaunchが3ヶ月早めることができれば、早期の販売によって新たな機会を獲得でき、より多くの売上と利益を得ることができます。

会社ではどうしても経費削減に目を向けがちですが、導入から複数年のメリットを考え、必要に応じて更に初期費用を上乗せすることも費用対効果を考えた際に有効な場合もあるので、十分に検討する必要があると考えます。

会社ではコスト削減に対しては非常にシビアであるのに対して、その掛かるコストと費用対効果について試算することが意外と簡単に考えられているケースもあり、得られる効果よりも見た目の経費が安く見えた方が良い、というように思うこともあります。 目先の費用にこだわって経費を削減した結果、そのシステムの納期が遅れ、思っていた効果も得られず、結果、目標としている予算を達成できなかった、となれば本末転倒となります。 

経費はその費用に見合う成果物を得るために掛けるものです。その必要な成果物を得るための費用を、目先のコストを削減することを優先した結果、自ら機会損失を作り出し、結果的に無駄金を支払うようなことは是非避けるべきです。 

経費は、複数年で得られるであろうメリットを勘案し、費用対効果を検討し、目先の費用にとらわれることなく、今後得られる大きなメリットを十分考慮することが非常に重要と考えます。 

皆さんはいかがお考えでしょうか?

まとめ: 

  • 経費削減し、中途半端なシステムを導入すると無駄な手間が増え、逆に非効率になる場合がある。 
  • 目先の経費削減にとらわれると、本来得られるはずであったメリットが得られなくなる。
  • 本来必要な経費を削減することが目的ではなく、経費は必要な分を使うことで売上と利益を最大化することが目的。
  •  必要な経費を試算する場合、今後得られる費用対効果を十分検討する。 
  • 導入から複数年のメリットを考え、必要に応じて更に初期費用を上乗せすることも費用対効果を考えた場合有効な場合があるので、十分に検討する。 
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