【新たな販売方法の提案】同じような製品でもやり方次第で販売は可能

製品自体の「価値」で勝負するのではなく、体験と製品を含めた「価値」を提案することによって、強い製品力を持った製品に対して勝負することが可能となります。 

旅行先で手軽にふるさと納税ができる自動販売機に注目が集まっているようです。2022年3月20日の記事によると、ふるさと納税を自動販売機を使用することで飲み物を買うように簡単に手続きができ、その場で商品券などの返礼品を受け取れる利便性の高さが人気の理由とのことで、登場から1年超で、栃木や山梨など4県の計7市町村に導入されており、今後も各地に広がりそうとのことでした。 

この取り組みの面白いところは、販売している製品(ふるさと納税返礼品)がホテル宿泊券や割引券など、その地域で使用できる、特に目新しい返礼品というわけではなく、その販売方法を変えるだけで売上(納税)が増加した、という点が面白いポイントとなります。 

よく会社では、売上が上がらない製品は「既存の製品が良くない、新しい画期的な製品が必要だ」などと言ったマインドに陥りがちです。確かに製品が良くなく、改良が必要な製品もたくさんあるかと思いますので、一概に製品改良すること自体を否定するものではありません。ただ今回の事例の場合、製品ではなく顧客(観光客)へその地域と製品(返礼品)の「価値」を提案できたことによって、集客(納税)につなげた点が大きなポイントではないかと思います。 

各種ふるさと納税サイトでは、たくさんの製品が一同に並べられています。まるでショッピングモールのようです。ショッピングモールではたくさんの返礼品があり、量が多い、普段食べないものなど、すなわち返礼品自体が重要視されます。北海道のカニ、ウニ、イクラなどは返礼品として人気が高く、そのような返礼品を扱っていない他の自治体では納税を即すことが難しいとよく言われます。しかし、それは返礼品自体で勝負を挑んでいるからであって、そのためにカニ、ウニ、イクラ自体の返礼品の【価値】が高くなってしまうため勝負ができない、となってしまいます。 

しかし、今回の自動販売機の事例では、「返礼品の価値」ではなく「旅行という体験も含めた価値」を提案している点が、顧客(旅行客)に受け入れられた事例と考えられます。

すなわち、 

  1. 旅行に行き、非日常の体験を楽しめた。 
  2. この非日常の体験を、また【機会があれば】体験したいと感じてもらう。 
  3. また体験したいと強く感じているその訪問先で、その非日常を体験することができる【機会】をすぐに提案する、すなわち、自動販売機で返礼品(地域クーポン、ホテル割引券など)を用意することで、リピートの意欲が高いその地域にいる間にその地域の「価値」を提案することができる。 

製品(返礼品)はクーポン券やホテル割引券ですから、製品自体は決して特別なものではありません。しかし、そこに楽しかった旅行における非日常の体験という「価値」を付加価値として提供することによって、より大きな「価値」が生まれることになります。 

製品(返礼品)ありきでは、その製品の良し悪しによって納税が決まりますのでたくさんの競合相手が存在します。一方、その地域でしか使えない返礼品(ホテル割引券など)は、その土地でしか味わえない体験が付加価値として加わりますので、その土地に興味を持った旅行者には、他では得られない唯一無二の「価値」の提案となり、そのため競合相手はほぼいなくなります。 

また、このような現地で行う方法は好循環を生み出します。 

  • まず、この返礼品を旅行客が購入していただくことによって、リピーターが獲得できますので観光地は潤います。 
  • 返礼品を購入してもらうため(リピート顧客となってもらうため)、観光地では観光客に満足してもらうために、より良いサービスを提供するようになります。 
  • 良いサービスを提供する事で、その地域の良い評判が上がり、さらにたくさんの集客が期待できるようになります。 
  • 良い体験ができればたくさんの観光客が「またここに来たい」と考え、次回、訪問する際のお得なふるさと納税があれば、それを行います。 

観光客はその旅行を楽しむことができ、観光地は潤うことができ、そしてその自治体への納税額もアップすることによって地域も活性化でき、まさにwin-win-win の関係が出来上がります。 

旅行にくるほとんどの方は、その土地のふるさと納税がどのようなものがあるのかを存じていないと思いますので、ふるさと納税の自動販売機を設置することによって観光客への認知度も上がり、ここでも新たな価値を創造することが可能となります。 

このように同じような返礼品であっても、体験できる価値まで提案できれば他に比べ大きな価値を生み出すことが期待できると考えます。 

また以前、他の地域では通常体験できない「価値」を提案した事例も紹介されていました。大阪府枚方市でバレーボールチームのパナソニックパンサーズの選手の放つスパイクを受けられる、というふるさと納税がありました。 

プロのスパイクを受けることなど普通体験することはできません。こう言ったふるさと納税も普通では体験できない「価値の提案」であり、通常では得られない体験を堪能できる唯一の「価値提案」ですので、他のふるさと納税にはない強い「価値の提供」となります。 

色々な返礼品が多数存在はしますが、このような体験まで考慮した「価値の提案」はそこでしか体験できない唯一無二の返礼品ですので大きな強みになると考えます。 

今回の自動販売機によるふるさと納税の販売は、地域のふるさと納税の返礼品に大きな特徴がなくても、それに付随価値をつけることができれば他の地域との差別化によって大きな強みを出すことが可能であるという、良い事例だったように思いました。 

皆さんは如何お考えでしょうか? 

まとめ 

  • 製品に特徴がなくても、やり方によって大きな「価値」をを生み出すことはできる。
  •  他社と同じような製品であっても、新たな価値(付加価値)を提案することで他社との差別化を行うことができる。
  •  体験型の価値は、その場でしか得られない唯一の価値。その価値をより強くお客様にイメージしてもらうことで、より多くのリピート客を獲得することができる
  • 体験型価値を提案することは、価値を提供する方のスキルも高めることができ、それによりより大きな付加価値を生み、全体に対し好循環を生み出せる。 

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