「現状維持バイアス」とは、たとえ有益であったとしても、知らないものや経験したことのないものを受け入れることに心理的な抵抗が生じ、現在の状況に固執してしまう傾向のことを指します。
皆さんはこのようなご経験はありませんか?
NTTドコモは2021年3月1日、新料金プラン「アハモ」の基本料金を見直すと発表しました。データ容量20ギガバイトで月2,700円(税抜き)に改める、とのことです。3月中旬から、NTTドコモだけでなく、au、ソフトバンクも新料金プラン、いわゆる格安料金プランを開始します。
現在、日本ではイオンモバイルや楽天モバイルを含め、格安プランを提供する事業者が10社以上存在しています。政府が携帯電話料金の値下げを要求し、大手キャリア3社が新料金プランを発表する前から既に格安プランが存在していたわけです。
また、9回目となる2023年のマイボイスコムの調査では、32%が格安スマホを使用していますが、まだまだ普及しているわけではないようです。
逆にいうと7割の顧客が大手キャリアの通常プランを利用していることから、たくさんの格安プランがあるにもかかわらず、あまり普及していないとも言えます。
最近では1,000円/月を切る格安プランもあります。それにもかかわらず、5,000-6,000円/月もするスマホ料金を払い続けている人もいます。
一方、近くのスーパーのキャベツが1つ200円で高いと感じれば、別の安いスーパーまで足を運び買いに行く人もおられます。
また、他の商品でも同様の傾向があります。
例えば、現在、加入している生命保険のプランが少し高いな、と感じているにものかかわらず、見直しをせずにそのまま高い保険料を払い続けている、など。
このように、「本当は値段が高い」とわかっているにもかかわらず、新しいものや経験したことのないものを受け入れることに対して心理的な抵抗が生じ、そのまま続けてしまうという「現状維持バイアス」がよく起こっているように思います。
上述の第9回マイボイスコムの調査によると、格安スマホを利用していない人の理由として「現在利用しているもので満足している」が50.7%、「通信の安定性や速度に不安がある」が18.4%、「格安スマホを詳しく知らない」が15.1%とのことでした。
この理由「現在利用しているもので満足している」とありますが、格安スマホの方が使用勝手や新機種が手に入るかもしれません。「通信の安定性や速度に不安がある」とありますが、格安スマホの通信速度が自分が使用している時間帯や容量には影響がないかもしれません。
本当は「知らないものや経験したことのないことに対して知ろうとしない、それを受け入れることに心理的な抵抗が生じている「現状維持バイアス」によって乗り換えていないのではないでしょうか?
それでも最近では、スタグフレーションの影響か、格安プランの需要は年々増えてきているようです。
格安プランは通信料金を削減できるだけでなく、柔軟な契約プランや追加オプションの選択肢も提供しています。これにより、顧客が自分に合ったプランを選ぶことができます。
格安プランは、価格競争の活性化や我々消費者の利益につながる可能性があります。
ただし、大手キャリアが格安プランに完全に切り替えるかどうかは疑問です。彼らは高品質なネットワークとサービスを提供するために高いインフラコストを負担していますので、バランスを取りながら価格と品質の両方を考慮する必要があります。
そう考えた場合、大手キャリアは政府からの要請で格安プランを導入はしていますが、日本人は「現状維持バイアスが強いので、格安プランに大きく移行することはない」ことを理解した上で、格安プランに移行しにくい環境を作っているのかもしれません。
確かに店舗を構える、そこにスタッフを置くことは、大きなコストがかかるため、利益率が低いと想定される格安プランではこれらを設置することが難しいかもしれません。
格安プランの申し込みには通常、Webサイトを使用することになりますが、「現状維持バイアス」をもった方は、知らないものや経験したことのないものを受け入れることに心理的な抵抗があるので、こう言った申し込みに対する不安を拭えません。
結果、現状時バイアスによって「そのままのプランでいいか」と、現状のキャリアを使用し続けるという流れになり、大手キャリアは政府の要望を受け入れつつ、利益を最大限維持できる、という環境が出来上がります。
では実際に、格安でも人気のあるブランドとはどう言ったものでしょうか?
例えばやイオンモバイルがあります。
MMD研究所、「2023年2月MVNOのシェア・満足度調査」の結果を見ますと、MVNOのシェアは「OCN モバイル ONE」がトップですが、総合満足度トップは「イオンモバイル」だったようです。
イオンは言わずと知れた大手の総合スーパーであり、日本中、どこにでもあります。スマホの申し込みはそのイオン内にある店舗でスタッフと対面で行えますから、不明な点はその場で確認ができるため非常に安心感があります。また、そのイオン内には楽天mobileやYmobileなども店舗を構えており、このような対面で契約内容を確認できるキャリアが伸びていると思います。 不安と手間を払拭でき、メリットについて直接話を聞くことができるからでしょう。
先にも示しました通り「現状維持バイアス」とは、たとえ有益であったとしても、知らないものや経験したことのないものを受け入れることに心理的な抵抗が生じ、現在の状況に固執してしまう傾向のことを指します。
であれば、心理的な抵抗を下げるため、対面による以下の確認
例えば、
- 手続きは非常に簡単であることを理解させる。
- その手続きはスタッフで可能であることを理解させる。
- 乗り換え時のお客様の不安(面倒臭い・MNPの取得・オプションの解除など)が何かを理解する
- 新しいプランのメリット・デメリットを理解してもらう。
- 変更における手間を省く。時間をかけない。
などを実施できるキャリアが今後伸びてくるのではないでしょうか。
特に高齢者は、今更、キャリア変更など手間のかかることはことはしたくないでしょう。オプションの解除が必要であるなど煩雑さが増すと、なおさら乗り換えは行ってもらえないでしょう。
また、「現状維持バイアス」も高いと思われ、現状を変えることにメリットは少ないと考える傾向が高いように思います。選挙でもほぼ現候補者が勝利するのはこういう考えからだと思います。
この現状維持バイアスを払拭するためには、現在使用している製品よりメリットがあることを顧客に示す必要があります。
販売する製品が同じようなものであれば、なおさら差別化する必要があります。その1つに人とのコミュニケーションによる情報サービスが重要と考えます。
格安プランであればあるほど、維持コストを考えた場合、人件費や店舗を設置することは難しいかもしれません。しかし、コロナ禍で人との接点が非常に希薄になってる世の中において、人のコミュニケーションはより重要となり、それが大きな価値にもなっていると思います。
現在のスタグフレーションの中、格安スマホへ移行される方が増えてくることが予想されます。そういった中、顧客に選ばれるものは人によるサービスができるキャリアが今後伸びていくように思うのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか。