「餃子店や焼肉店… 物価高騰でも価格を死守する飲食店の“ド根性経営」
燃料費の高騰、円安の影響もあって食料品、電気代などの光熱費等、あらゆるものが値上げされています。そんな中、逆風に抗って歯を食いしばり、価格を据え置いている企業として餃子店が紹介されていました。餃子の皮の原料となる小麦が高騰し、仕入れ価格は3割増しになったそうですが、「生涯据え置き」を宣言しているとのとです。「リピーターが多く、値上げしたらお客さまが敏感に反応します。ずっと来てくれる方々は一番大切にしなければならない。彼らのためにも『値上げはしない』という根性でやっております」とのこと記事でした。
確かに消費者にとって価格据え置きというのは非常にありがたいことではありますが、本当にそれは正しいことなのか、少し疑問が残った記事でした。
この記事だけではなく、お客さまのために値上げしない、といった記事やテレビ番組も多数ありますが、どうも日本人の感覚として「値上げ=悪」といった考えが非常に根付いており、お店としても値上げするのが顧客に対して申し訳ないと言った感覚が出過ぎているように感じます。
そのような感覚が一般的になっているためでしょうか、値上げをせず薄利多売で頑張っていることが美徳のように伝えられます。テレビの番組でも安くてボリューミーなお店が消費者に優しいお店として多数紹介されています。
本当にそれで良いのでしょうか?
企業を存続させるためには適切な利益を生むことが重要であり、それは個人経営でも同じことだと思います。利益が出るからこそ従業員にもちゃんとしたお給料を支払うことができます。 しかし薄利多売だとお給料は上がらないことは今の日本が結果を示していますし、原価が上がっているのに値上げをしなければお給料が上がることは叶わないと思います。
また、利益が出せず、結果、お店が潰れてしまっては本末転倒です。お店が潰れてしまうことこそがお客さまに対して一番行なってはならない行為だと思います。
このような状況の中、経営者、従業員が長時間労働や安月給で疲弊し、そういう事実に目を瞑った状態で消費者に優しいお店、と言うのはちょっと矛盾を感じます。 やはり、みんなのために必要な値上げはしていかないといけないように思います。
例えば記事にあった餃子店のような個人経営店ですとお店のキャパシティは決まっており、利益を上げるためには顧客の回転率を上げる、集客数をアップする、客単価をアップさせることが考えられます。上述の記事だと顧客単価は上げないようですので利益を確保するには回転率の向上、もしくは集客数のアップでしょうか。
集客数をアップするとなると、効率化を進めないと従業員は非常に忙しくななりますね。機械化し効率を上げるにしても資金が必要になってきます。働いているアルバイトからすれば、仕事が増えたにも関わらずお給料はそのままなわけです。仕事量が増えてるのにも関わらずお給料が上がらなければどうでしょう?アルバイトも生活があるわけですからもっと良いバイト先を探すかもしれません。時給と仕事が釣り合わなければ今、働いているせっかく店に慣れたアルバイトが辞めます。次にくるのは、その時給(安い時給)でも働かなければならないアルバイトとなります。低賃金だとアルバイトの質も高くはならないでしょうし、それによりお客さまに対してサービス低下も考えられます。また原価高騰の中で価格維持するためには、ある程度品質を低下させることもあるでしょう。その結果、既存の固定客が離れる、と言った悪循環も想定されます。
私は関西人ですので「餃子の王将」の餃子が大好きです。ちなみに餃子の王将も値上げをしましたが、私は変わらず食しています。
なぜか?単純にこの餃子を食べたいから、です。
この餃子が好きだから食べているのであって、値段で食べているわけではないからです。 もちろん、一皿200円の餃子が1,000円になれば食べることを躊躇しますが、20−30円の値上げですから毎日コンビニや自販機で購入している缶コーヒーやお茶を1回買わなければ、餃子の値上げ分は十分賄えますので普通に食べれるわけです。
100円回転寿司も最近値上げしましたが、200円やそれ以上の価格のお寿司も以前から販売されています。それでも値上げによって顧客が減ったと言うことはないですし、顧客にとって十分満足できるお寿司だと思われます。
上述の餃子屋さんに顧客が望んでいることは、「このお店の餃子を食べたい」はずです。
少し値段が上がったからといって顧客が離れるのであれば、そもそもその餃子は、価格によって選ばれていた餃子を意味し、価格以外の「価値」がないことを意味します。もちろん価値と価格のバランスは重要ですが、価格によって製品を選んでいる顧客はその餃子でなくてもよく、結局は安いものに流れていきます。
必要な値上げを実施し、製品の質、サービスの質を確保し、従業員を守り、顧客に美味しい餃子を提供することは決して「悪」ではなく、それこそ顧客を満足させるものを提供するという企業としての本来の姿勢ではないでしょうか。
薄利多売のお店は非常に美徳のように伝えられますが、それではいつまで経ってもお給料は上がりませんし、従業員の生活は楽にはなりません。実際に100円寿司が値上げをしていることが薄利多売が限界にきていることを示しています。
長い不景気の中、企業努力で値上げをせず利益を確保していることは素晴らしいことではあるのですが、その結果、固定費である人件費がカットされ従業員のお給料も上がらない状態が続いています。そういった状況しか経験していないので値上げに関してどうしても敏感になってしまいますが、最終的には自分達の生活を豊かにするためにも多少の値上げには寛容になるようにしたいと感じています。
みなさんは如何お考えでしょうか。
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