新型コロナウイルスの流行が始まった2020年以降、定番サイズの半分以下である「195ミリリットル」の商品が売れるようになったそうです。
昔は来社時に応接室に通されると、受付の方がお茶を出してくれた時代もありましたが、昨今、急須で入れるお茶は、このコロナ禍に於いては衛生上好まれない飲み物となったかもしれません。
195ミリリットルであれば、その場で無理なく飲み切ることができますし、持ち帰る場合でも、かばんにきれいに収まる、とのことです。
サントリーも伊藤園もお客様のターゲティングがすごいですね。
ペットボトルのお茶など市場には星の数ほど商品があります。その中でサントリーは『会社に於ける来客用として』、伊藤園は『高齢者が飲み切れる製品』として製品ポジショニングを明確にし、195ミリリットルのペットボトルの販売に繋げておられます。
195ミリリットルの『お茶、どうぞ』は、アスクルのみで企業に対してだけ限定販売されていますが、まとめ買い本数にもよりますが、一本あたり70円ぐらいで販売されているようです。280ミリリットルが80円、350ミリリットルが100円ぐらいですので、今まで来客用にと280ミリリットルや350ミリリットルを購入していた企業からするとコストも安く抑えられます。
また、今までこのようなお茶を購入していない企業も、急須で入れるお茶よりも衛生上で、お茶を入れる時間、手間も削減されるわけですから全体の経費を考えても有用と言えるかもしれません。
また、このお茶は前述の通りアスクルにて企業向けに販売しているものですから、一般には流通しておりません。
このお茶が一本あれば、特別なお茶として目を惹きお茶をネタにしたオープニングトークもできるでしょうし、商談に入る前のアイスブレイクとしてお客様とのコミニケーションツールとしても有用に働くような気がします。
お茶という製品で大きな差別化ができない商品(と私は感じていましたが)でも売り方を考え、「商品価値を創造する」ことができれば、成熟した市場でもまだまだ勝負出来るということでしょうか。面白いですね。
色々と考えてみると、確かにお茶と言っても、緑茶、玄米茶、麦茶など色々あって、緑茶でも夏場はゴクゴク一気に飲みたいですし、冬場は少し濃いめのお茶で温まりながら飲みたいと感じることもあり、そのシュチュエーションによって製品コンセプトを変え、ターゲティングを変更し戦略を変えているということですね。
以前、アサヒの缶コーヒーで「アサヒモーニングショット」というコーヒーが販売されましたが、あのコーヒーも当初は内容物であるコーヒーの品質は、他の同社で販売しているコーヒーと特に変わりはなかったようです。
違う点は、顧客のターゲットを「朝、仕事の前にコーヒーを飲んで目を覚まし仕事のスイッチを入れるサラリーマン」とし、飲む時間帯を限定した商品とした点です。
そうすることで、朝、会社に行って仕事を始める前に飲むコーヒーを選ぶ際に、自動販売機やコンビニで購入するコーヒーとしてモーニングショット(←朝(今)に飲むコーヒーとして)が目に入る、と言った戦略となるわけです。
今では定番化した「サントリーのBOSS」も最初の顧客ターゲットは「長距離トラックの運転手が眠気覚ましに飲むコーヒー」としてセグメントを決めて販売され、大ヒットした製品だったと思います。
こう言ったコンシューマー製品に対する販売戦略として製品コンセプトの明確化、顧客ターゲットの絞り込みが如何に重要か、良くわかる事例ですね。
私自身が行っている仕事でもある程度一般化した製品はいくつもありますが、競合他社が多い市場では、得てして低価格戦略を取りがちですが、お茶やコーヒーのように価格差別化が出来ない製品でもやり方次第で同一価格帯で大きな販売が期待できるということを教えてくれる良い事例のように感じます。競合他社が多い≒低価格戦略ではない、ということですね。
こういうことがマーケティングの醍醐味ですね。非常に参考になりますし面白いと感じました。
皆さんは如何お考えでしょうか。