【不便だからこそ生まれる価値は他社との差別化になる】

 他社と同じような価格帯、同じようなサービスでそのお店の価値を見いだせない場合、ちょっとした不便なことが逆にそのお店の価値につながることもあるのではないでしょうか?

昨今のお店、例えば家電量販店、ラーメン店、美容室、などを見た場合、他の競合店と比べて魅力的な差別化、すなわち「価値」を感じることがあまりありません。 

家電量販店は品揃えも豊富で、同じような価格帯、ポイント還元などのサービスも同じようなものです。よって、私の様な電化製品好きな人間は、ポイントがたくさん付く店舗には行きますが、価格メリットがなければ製品は家電量販店で確認し、net通販で購入することが多くなっています。 

ラーメン店もチェーン店も含め色々とありますが、どこのお店もそこそこ美味しく、価格帯もそんなに変わりません。その日の気分によって今日は醤油ラーメンかな、豚骨かな、くらいの違いでお店を選んでいます。美容室についても価格帯もそんなに大きな違いはありませんし、カットする方を指定しているわけではありませんので、近くにお店があるので、たまたま入ったお店で特に問題なければそこに固定されるといった感じです。カット1,000円のようなお店は、顔ソリの時に血まみれになるときがあるので、行かないようにしていますが。 

どこのお店も一定のクオリティと価格が保たれていますので、それなりに同じようなサービスを受けられるようになってきており、どこもそんなに変わらないわけです。コレ、という選択理由がないわけですね。ということは、お店でのマイナスポイントがあれば、すぐに他のお店に移られる可能性が高いということです。

そうなると現状はどこのお店も固定客、ファンとなるような顧客が作りにくい環境になっていると言えます。

固定客(ファン)を獲得することは非常に重要です。新たなお客を増やすのはそのお店のファンであり、そのファンの獲得のための差別化が非常に重要になります。 

どこでも同じようになり差が生まれない状態である中、不便だからこそ生まれる価値があれば、それが他社との差別化になり得るのではないでしょうか?

例えば、「不便だからこそ生まれるコミュニケーションが、他社との大きな差別化となり価値となる」

昨今のコロナ禍で人とのコミュニケーションも少なくなりました。例えば、テレワークが浸透し会社のメンバー内でのちょっとした雑談をする機会もなくなり、住んでいるマンションのエレベーターでもしゃべることもなくなったため「おはようございます」「こんにちは」の挨拶もできない環境になりました。

人間は集団で生活する生き物ですから、ちょっとしたコミュニケーションが非常に重要となります。現在はコロナ禍でなかなか人とのコミュニケーションが取りにくくなっています。また、コロナ禍だけでなく昨今は世の中が非常に便利になってしまった弊害で、人とコミュニケーションを取ることなく、欲しい商品を購入することができます。最近はどこのお店もバリアフリー化したり、エレベーターがあったり自動扉がついたりと、特に他人に接することなく入店できたり、買い物ができます。net通販は非接触型の典型です。 

世の中が便利になり個人で物事が完結できる状況になれば他人とのコミュニケーションを取らなくて済みます。現在はそれが当たり前になりつつあります。

そこで、あえて「コミュニケーションをとれるような環境をお店の中に作ってみる」ことが1つの差別化戦略にはならないでしょうか? 

先に示しましたとおり、人間は集団で生活する生き物ですから、ちょっとしたコミュニケーションが非常に大事です。人との接触が少なくなった現在、あえて、ちょっとしたコミュニケーションを行うことによって顧客を少しでも助けることができれば、それは大きな価値となり得るのではないでしょうか?

もともと接客が重要な職種、例えば美容室でご年配の顧客をターゲットにするのであれば、入り口や室内にあえて段差(スロープでもよいと思いますが)をつくる。もちろん、つまずいたりするリスクはありますので、これはスタッフが必ず顧客に対してサポートを行うことを前提とします。段差を移動する際に必ずスタッフがサポートをすることによって、今まで発生しなかったコミュニケーションが発生します。「大丈夫ですか?」「お足元にお気をつけください」「ご来店ありがとうございます」などのお声かけ、ちょっとしたサポートによるスキンシップなど。

ただ、席に座りカットをするだけでなく、あえてちょっとした「不便」を作りサポートをすることによって、他店では発生しないコミュニケーションを生み、お店はご来店頂いた感謝、顧客はサポートをしてもらった感謝がお互いに生まれ、ただカットしながら話をすることとは違う、他のお店とは異なるコミュニケーションが生まれます。そしてその顧客は、この小さなコミュニケーションに価値を感じ、今後、これにより得られたコミュニケーションを求め継続的な顧客になってくれるかもしれません。

サポート、感謝、スキンシップから生まれるコミュニケーションは、ただ話すだけのコミュニケーションとはまた違う一歩深いコミュニケーションとなり、顧客の脳裏に刻まれた結果、お店のファンになってくれるかもしれません。 そしてお店のファンになってくれた顧客は、また新たな顧客を生んでくれるかもしれません。 

私の実家の近くの小さな電気店は私にとって非常に不便です。品揃えも少なく、特にそのお店で製品を吟味する、ということができるお店ではありません。 しかし、母親はこのお店に非常に満足しています。 

なぜか? 

母親にとっては、多少価格が高くても、品揃えが少なくても、このお店はしっかりとしたコミュニケーション(サポート)を取ってくれるお店だからです。

いわゆる地域密着型という形式のお店でしょうか。スタッフさんの知識は、家電量販店の分野分けされたスタッフと同等の知識を持ち合わせているわけではありません。 しかし、コミュニケーションによって顧客が必要なことに気づくことができているのです。切れかかっている電球の交換、コピー機のインクの交換、スマホとコピー機の接続など。

大したことではないんです。私は特に問題なくできる事ですが、電球もワット数、ソケットのサイズ、形など、以外と色々種類があるのをご存じですか?またその記載は電球の側面にあり、非常に小さくてわかりづらい。

母親のような年配の方ではなかなか難しく非常に厄介な代物です。 

そういったことに気づき、サポートしてあげることができる。「わざわざ電球を取り付けてくれてありがとう」「こちらこそいつもご贔屓にして頂きありがとうございます」 。こういったやりとりから良質のコミュニケーションが生まれ、その結果、母親はその電気店の固定客(ファン)となったわけです。

先日、私が「このテレビは少し先の家電量販店で買った方が安いよ」と提案したのですが、配線やインターネットがの接続がよくわからないし、つながらなくなったら怖いので近くの電気屋で購入する、と言っていました。品揃えが少ない、欲しいときにすぐに購入できない、という不便さはあります。しかし、普通の家電量販店ではないコミュニケーションがとれるところに母親はメリットを感じ、ファンになったわけです。 

まとめ: 

  • ちょっとした不便から、得られる価値もある。
  • ちょっとした不便から、コミュニケーションが発生する。
  •  他のお店と違うコミュニケーション(サポート)が、他店との差別化のポイントとなり、お客様(ファン)を生む。 
  • ファンとなった顧客が新たな顧客を生んでくれる。
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