2021年8月15日に東洋経済オンラインにて、路線バスによる「貨客混載事業」の記事がありました。貨客混載とは、旅客車両の空きスペースを使って貨物を運ぶというもの。実はコロナ禍以前から、特に地方の路線バスで貨客混載の動きは始まっていた、とのことです。
この記事は兵庫県三田市のJA兵庫六甲高平支店の事例ですが、この地域で農業を営んでいる方が当日朝に収穫した野菜が入ったカゴを、カゴ1個あたり200円または250円の運賃で積み込み、JAの販売店で直販するという仕組みをとっています。
バス会社と物流業者がタッグを組むことで、バス会社は確実な運賃収入が見込め、物流業者は一部区間の輸送をバスにゆだねることで、ドライバー不足や労働環境改善に対応できるという仕組みになっています。
これは、非常に面白い取り組みではないでしょうか。
この取り組みでは、あらゆるところでwin-winの関係が成立しています。
例えば、
- バス会社は、空席を貨物として利用できるため、乗車賃を得られる。
- JAは安い運賃(バスの運賃)で販売場所まで貨物を運べるので、中間マージンがかからず、安く販売できる。
- 安く販売できるので、顧客は購入しやすくなる。
- 農家の人は、高齢化しているケースが多く、直販先まで貨物を移動させることが困難。JAとバス会社に委ねることで、新鮮な野菜を毎日提供でき、収入が得られる。
また、これ以外にも副次的に得られる効果もあり、
- バスに乗せる貨物が増えることによって現行の運行では貨物をまかなえなくなり、バスの運行が増える可能性がある。バスは、貨物が乗っているので、赤字の運行はしていない。バスの運行が増えれば、乗車する顧客の利便性が高まる。
- その地域で利益が出るようであれば、新たな農家の方が集まり、地域活性につながる可能性がある。
- 高齢者が車を運転する必要が少なくなるので、運転免許の返納なども期待できる。
などなど。 さまざまなメリットがある素晴らしい取り組みのように思いました。
ちなみにこの取り組みは、新たに何かを行ったわけではなく(もちろんJAなどでどのように運用するかは模索されたかと思いますが)、今ある資源の有効活用であり、新たに大きなコストを加えたわけでなく、創意工夫によって行われた点が非常に素晴らしいと感じています。
あちこちの地域で同じようなことが、うまく回転すれば良いですね。
また今回の事例のように、ヤマト運輸では今あるインフラの有効活用もされているようです。 電車やバスが廃止されないようになることは、地域の人の助けとなり良い取り組みですね。
考え方や、やり方を変えるだけでうまくビジネスが回ることがよくあります。効率が悪いからと言って、なんでもカットする、という考えではなく、それを如何に効率的に回すことができるかを考えることも非常に大事だと感じることができた事例でした。
皆さんはいかがお考えでしょうか。