私の家の近くにうどん店があります。そのうどん店は1杯の値段で3玉まで同じ値段で食せるということを売りにしている、いわゆるセルフうどんのチェーン店です。
店舗での手打ち麺ではないと思いますが、おそらく生麺を使用し味はまあまあと言ったところ。天ぷらなどの揚げ物も一通り揃っています。1杯の値段で3玉食べれるわけですから平日の昼間はサラリーマンや学生さん、休日は家族連れで賑わっています。
私は関西人なのでおうどんは好きなのですが、そのお店にはあまり行きません。理由は、結構待たされるからです。業態は丸亀製麺のようなセルフうどん店なのですが、それにしても丸亀製麺と比べて、特に昼の時間は30分ぐらい待たされることもあります。
羽田空港の丸亀製麺をご存知でしょうか?あの場所はこれからフライトする人や帰ってきた人が一日中、人が行き交う場所であり、ピーク時間がなくいつも混雑しています。お店もそこまで大きくなくそれなりに行列はできるのですが、それでもそんなに待つことがありません。お客様の特性上、フライト前なのでサッと食べて出ていくということもあるとは思いますがオペレーションの無駄を徹底的に見直し、お客様の動線を見直すことによりスムーズに顧客を誘導し、結果的に回転率が上がり、売り上げが確保されているようです。
一方、私の家の近くのセルフうどん店は、ピーク時になると30分ぐらい待たされます。
通常のサラリーマンのお昼休憩は45-60分くらいの会社が多いですが、30分も待たされたらそれだけでお昼休みがなくなってしまいます。お店の入り口からガラス張りで中が見えるので、並んでいる人の列を見るとげんなりして食べようと思う気持ちが私は萎えてしまいます。
待たされる大きな理由として、うどんがすぐに足らなくなっしまうからです。サラリーマン、学生、また小さなお子様連れのお母さんなど、うどん注文時に3玉を頼む方が非常に多く、30玉分うどんを茹でても3玉頼まれる方が連続するとたった10名しか注文できず、次のうどんを茹でる間待たされます。また、3個程度の茹で釜があっても空いている釜があったり効率が悪いように思います。
このような際にかなりの人が並んでいますが座席には空席が結構ありますので、前出の丸亀製麺の動線云々の問題ではなく、まず根本的に茹でるうどんが間に合っていないという状態が発生しています。
よって、お昼休みに3玉頼まれるお客様がたくさん入られると、うどんがすぐになくなり毎回待たされる状態が発生します。また、タイマーがなる前にうどんをザルに上げるなど、スタッフの方もいつもバタバタしているように見えます。
では、このセルフうどん店を昼間に利用する顧客、ここでは平日のサラリーマンや学生とすると、どのような人が利用するのでしょうか。
例えば、
- お腹を満たすことができる(満腹感が得られる)
- 出来立てでトッピングもあり、同じお金を払うコンビニ弁当より美味しい。
- 気軽にサッと食べることができる(ちょっとした時間で食べることができる)
- 安く美味しく
などでしょうか。
近くのセルフうどん店については、
- は3玉まで1杯と同額ですので満腹感が得られます。
- はチンするコンビニの弁当より、私もセルフうどん店の方が美味しいと思います。
- はどうでしょうか?うどんの茹でる間、結構な時間待たされてしまいますので、サッと食べる、というには少し疑問が生じます。
- の味に関しては、そこそこ美味しくいただけます。特にまずいと私は感じません。価格に関しては、素うどんは他のチェーン店と大きく変わらないと思いますが、3玉まで無料なためその分のコストが最初から揚げ物や肉うどん、カレーうどんなどに上乗せされている感じがあり、他のチェーン店より数十円高い印象です。
そう考えると、近くのセルフうどん店の問題は、③と④になるように思います。
サラリーマンの休み時間は決まっているので、時間がなければ食べることもできません。貴重なお昼休みの時間が並ぶために奪われてしまいます。
ただし、オフィスにある地元の中華屋さんなどであれば、顧客は「今日は中華が食べたい」と言った理由で「食べたいから並ぶ」と思いますが、セルフうどん店では、それに加えて「サッと昼食を食べたい」という理由も加味されます。中華屋さんで最初から「サッと食べたいから中華に行こう」とはならないですよね。唐揚げやラーメンなどはそれなりに時間はかかりますし。セルフうどん店と昼ごはんを食べる理由が若干異なるわけです。サッと食べたいわけですから待たされることを嫌がる顧客はそのお店に行く確率が下がり、よって本来、待つことが少なければ集客できた顧客を逃す「機会損失」が発生します。
また、このようはセルフうどん店は、そもそも薄利多売の戦略をとっています。このお店も1杯で3玉分食べれるというお得感を出し、そこにお得と感じた顧客がちょっと浮いたと感じる昼食代によってトッピングを購入してもらい利益を生み出そうと考えていると思います。ただ、揚げ物なども若干価格が高い印象ですから、揚げ物は2つではなく1つにしよう、おにぎりはやめて2玉を3玉に変更しよう、というコストカットのマインドが働くかもしれません。丸亀製麺などメジャーなセルフうどん店に普段通っていれば尚更そう思うかもしれません。丸亀製麺より安く食べたいと考えているのであれば、3玉食べてトッピングは少なくするでしょう。
3玉のメリットで顧客を確保するのであれば、顧客は主に「サラリーマン、学生」などの「たくさん食べたい人」をターゲットにしており、このセルフうどん点はそれなりにターゲットは明確なのかな、とは思います。夜であれば「小さなお子さんを持ったご家族」もターゲットになるでしょうか。
ただ一方で、そもそも3玉頼むお客様は「安い金額でお腹いっぱい食べたい」という一面もありますので、トッピングを購入せず、うどんだけで満足する顧客もいるでしょう。
そう考えた場合は顧客単価は上がらないと考えられますので、回転率が重要となります。しかし、茹で時間が掛かり回転率は落ちるわけで、また夜は昼間のように混雑しているようにも見えませんから、個人的にはこのお店がどうやって利益を生み出しているのか非常に興味があります。 3玉食べてトッピングがなければ、どれぐらいの利益なのでしょうか。
薄利多売のお店の売り上げ・利益を考えた場合、
- 集客率のアップ
- 単価を上げる
- 効率化(作業工程の見直し)で回転率向上
などがあるかと思いますが、 ①は3玉で安いイメージで集客はできると思います。②は現状の安いイメージにダメージを与えるため難しい。そう考えると待ち時間による集客率の低下や機会損失の発生も複合している③の効率化の見直しが必要となります。丸亀製麺の動線の話の前にうどんの茹で待ちをなんとかしなければなりません。
麺の改良、極端な話お得感=量(3玉)であれば生麺に拘らなくても良いかもしれません。茹で釜の改善、茹でる方法の効率化、また数年間営業しているのであれば曜日や時間帯による顧客情報から事前にうどんを準備する、などできるのではないでしょうか。まずはここを改善が重要になってくるかと思います。またもしかするとスタッフの教育がうまくいっていないかもしれません。ただアルバイトの方も多いと思いますので、誰でも同じようにできるよう茹でる工程の見直しの方が優先ですね。
もちろん、現在のこのお店でも満足されている方はたくさんいると思います。
しかし企業として考えた場合、3玉食せることによって顧客メリットは提供していますが、それによって回転率が低下し、顧客が離れ機会損失が発生し、また3玉食せることでトッピングの売り上げの低下がもし見られているのであれば、企業としては健全ではありません。今後どのような戦略を持って改善されるのか、たまに食べに行ってみようと思います。
いつも行っているお店でも、このお店は効率がいいなとか無駄な動きしてるなあとか感じることがあるかと思います。そのお店の対応が悪いな、と思うだけでなく何が問題で効率が悪くなっているのかな、とちょっと考えてみる癖をつけてみてはどうでしょうか。それが正しいか正しくないかは別途検証するとして、自分なりの改善点など普段の生活で考える癖はつきますし、それが仕事でも色々考えることにつながってくると思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?