私の住んでいる最寄り駅の周りには、非常に多くの美容室があります。 各美容院でどんな集客方法で顧客を集めているのでしょうか。非常に気になったので、美容室の戦略について素人ながら考えて見ました。
私の住んでいる最寄駅の目の前にまっすぐ大通りがあるのですが、駅付近に4軒の美容室、最初の左右の角に4軒、その奥の道に2軒件、また自宅から歩いて駅に行く道中に2軒、最寄り駅近辺だけで少なくとも12軒の美容室が存在します。ちなみにこれは駅の西口だけの話で、東口でも同様のことが起こっています。とんでもなく激戦区で、コンビニより3倍以上あると思います。
なぜこんなに美容院があるのかは謎です。 確かに最近、駅の近くにたくさんの分譲マンションが建設され、新たな住人が増えているとは思います。それもあってかここ3-4年で美容室が急増しました。
さて、美容室の回転率ってどれぐらいなのでしょうか? 明確にはわかりませんが、ざっと計算して見ましょう。
例えば美容室を2人で経営している店舗と仮定します。営業時間9:00-17:00だとすると、お客様一人にかかるカット時間は1時間くらいでしょうか。そうすると1日あたりの営業時間の8時間で8名のお客さん、二人で運営していると1日あたり16名のお客さんのカットが可能です。
美容室は週休1日と3週目の火曜日も休みのところが多いので、月のお休みは5日間であり、そうすると1ヶ月の稼働日は25日となります。2名体制の美容室だと1ヶ月あたりの顧客は25日×16名=400名のカットを行なっていることになります。
先に記載した通り最寄り駅近辺には少なくとも12件の美容院がありますので、仮に月に1回お客さんがカットすると仮定すると、12軒の美容院では1ヶ月あたり400名×12軒=4,800名のお客さんがカットしていることになります。実際には2名以上の美容師がいるお店もあるわけ、おおよそ6,000-7,000名ぐらいカットしているのでしょうか。
駅の近隣にたくさんのマンションが建設されているとはいえ、それなりに大きなマンションでも100世帯程度ですので、10棟の分譲マンションが建設されたとして、全世帯が既婚者として奥様が1,000名、娘さんがいたとしても、新規顧客は4,800名には及びません。そう考えると急激に増加した新しい美容室には顧客が集まりにくい、かなりの売り手市場になっていることが予想されます。
昔からこの駅近辺で美容室を行っている知り合いの方に伺いましたが、最近はお客の取り合いが大変とのことでした。固定客を守っていくことも大変なようです。
個人的な感想ですが、美容室はガラス張りになっているお店が多く、通りすがりに中をのぞいてみると、どこも大体同じような感じのお店で、同じような美容師さんに見えますし、お店の中のカットの写真なども同じようなポスターが張り出されていたり、特に店ごとに特徴があるとは感じませんでした。この辺りの美容室は売り手市場と予想しますので、例えばA美容室のカットが下手と感じてしまったら、次からはB美容室に行けば良いですし、それが嫌であれば次にC美容室に行くと言う選択肢が発生しています。駅前に集中しているので移動時間も同じくらいです。固定客がいれば毎月の収入が計算できるでしょうが、競争相手が多くなればその固定客の確保も難しくなってきます。店舗型ですから簡単に移転することもできませんので、その場所での顧客の集客が求められます。
カリスマ美容師がいてこの人じゃないとカットは嫌、というくらいのレベルであれば話は別ですが、そのレベルの美容室でも雇われのカリスマ美容師であれば独立するでしょうし、カリスマ美容師がお店を離れればお客様も一緒に離れてしまいます。
固定の顧客を確保するためには「そのお店じゃないと困る」という顧客ニーズを満足させる「戦略」と「価値」が非常に重要となります。
では、まず、なぜそのお店でカットしようと思うのでしょうか。
カットしにくる理由として、例えば、
- 価格が他の店舗より安い
- 家から近い
- 自分に合ったヘアスタイリストがいる
- カット時間が短時間で済む
- 自分に合ったヘアスタイルを提案してくれる
- 子供を連れて行っても、子供をケアするスペースがある
- 年配のユーザーにフレンドリーである
などでしょうか。
顧客がカットしにくる理由として「そのお店じゃないと困る」という「価値」を作らない限り、新たなお店ができれば顧客は少しづつ流動していくと思います。ただ逆に言うと、お店に「価値」があれば、その「価値」を求めた顧客が他店から流入すると言うことです。
では、上記の7点のカットのために来店する理由に対して、他店との差別化、すなわち「価値の提案」はできるでしょうか?確認していきましょう。
- は他の安い店舗ができれば、そちらに流出しますね。
- は限定された顧客のニーズですので、こちらも他に店舗ができれば流出しますね。
- も自分に合ったヘアスタイリストが移動すれば、今、通っているお店に通う理由がなくなってしまいます。
- は忙しい顧客、例えば小さなお子様のいる働いている女性や男性などが休日にわざわざ時間を作ってカットに来なくても会社帰りにサッとすませることができるのであれば「価値」はありそうです。
- も、例えば、天然パーマの方や髪の毛が細い人、薄い人、髪の生え方などによって、自分が望んでいる髪型になかなかできないと悩んでいる顧客に対して、顧客に合った髪型を提案できれば「価値」はありそうです。
- も小さなお子様をお持ちの専業主婦の方がカットに行きたいと思った時、子供の面倒を見れるようなスペースがあれば、安心してカットできますし、ついでに子供のカットも注文してくれるかもしれません。
- も年配の方ではカットのために1時間も椅子に座っているのは大変な方もおられるでしょうし、④の短時間と組み合わせることで時短と言う「価値」は生まれるでしょうし、また、美容室のシャンプーは仰向けで行いますがそれが難しいようなお客さまには、ただ霧吹きで髪を濡らすという簡単な方法ではなく、負担がかからないようなシャンプーの方法で通常と同様のシャンプーができれば、お客さまにとっては他店より「価値」が生まれるかもしれません。
上記、7つの来店する理由では、④、⑤、⑥、⑦は顧客に対してなんらかの訴求ポイント、すなわち「そのお店じゃないと困る」という「価値」を生み出せそうです。
ちなみに私は、ちょっと遠いですが歩いて20分程度かかる理容店に通っています。ちなみに理容室も多く、家から2-3分のところにもあります。遠いお店ですが私には「価値」のあるお店だからです。
上記でいくと、そのお店には⑤の価値が私にはあります。私は側頭部が張り出した頭の形をしているのですが、例えば私がツーブロックにしてほしいと注文した際、私の頭の形の情報、サイドの髪が真っ直ぐ横に生えてくるので側頭部がどうしても張り出した髪型になってしまうなどの「現状の説明」をし、そして、ツーブロックにするのであれば、刈り上げは7ミリだと浮いてしまうので5ミリ以下にした方が良い、上部の髪をある程度伸ばし、上部の状態も併せて横に張り出すことを抑えることができるなど、現状の問題を解決するための「提案」をしてくれます。
この「提案」が私にとっての「価値」です。なので、このお店に通っています。
では、先に記載した来店する理由である④、⑤、⑥、⑦のどれを「価値」として提案していくことが良いのでしょうか。それは、その地域の顧客の状況を確認しなければなりません。
例えば、新しいマンションや地域の女性の⑴家族構成、⑵女性の構成、⑶地域の動向など。 その地域の特性を確認し、それに合った「価値の提案」を考えていかなければなりません。
地域に合わせた顧客を絞り込むというのは、⑴の家族構成とは、新婚さんが多いのか、小さな子供さんがいるのか、親と同居なのか、大きな子供がいるのか、子供が巣立って夫婦二人暮らしなのか、など状況の確認です。 ⑵の女性の構成とは、主婦層、高齢層、学生層、など年齢による構成比率の確認です。 ⑶の地域動向とは、近くの小学校、中学校、高校の定員は割れているのか、それともマンモス高なのか、大学生はどれぐらいいるのか、今後の地域の住民動向などの確認です。これらの情報は市役所等のWEBでも確認できます。
これらの情報を組み合わせ、ターゲット顧客を絞り込んでいきます。
例えば、⑴で小さなお子さんがいて、⑵で主婦層が多く、⑶で小学校のクラスの数が多い、などの情報があった場合、この地域には 「小学生やまだ小さな子供もいるご家庭で、若い主婦層が多く存在する」という顧客が仮設として想定されます。実際はさらに情報を収集して仮設が正しいか確認しますが、ここでは正しいとした場合、この顧客のニーズにはどのようなものが考えられるでしょうか。
- なかなか目を離せない小さな子供がいる。
- 共働きで土日しかカットに行く時間がない。時間がないので、ついでに子供のカットも一緒にしたい。
- 会社帰りにサッとカットをしたい
- 専業主婦ではあるが、子供が小さいため、夫がいないと美容室に行けない。
などがニーズとして考えられ、「その美容室ではないと困る」と顧客が考える「価値」としては、先に記載の④カット時間が短時間で済む、⑥子供を連れて行っても、子供をケアするスペースがある、が上がってくると思います。
そう考えた場合、美容室のコンセプトとして「子供を一緒に美容室に安心して連れて行くことができ、カットが短時間で終了する美容室」などが考えられます。
となると、どのような戦略が考えられるでしょうか。
例えば、
- 美容室に子供が遊べる環境(小部屋等)を整える
- 子供が待っていても退屈しないようなおもちゃやDVDなどを用意する
- 子供を一緒に連れて行って子供もカットをすれば、通常より割引率がアップする
- カットやシャンプーなどで移動する動線を見直し、時間短縮を行う
- 一人にかかるカットに行う作業効率(例えばシャンプー、ドライヤーでの乾燥)を見直し、時間短縮を行う。
- カット時の予約で「時短」という分類を新たに作り、それに応じたサービスを提供する。
顧客の差別化で考えた場合、小さな子供をもった主婦層をターゲットにすると、その店舗には子供を連れて行けるという安心感から、固定客になっていただける可能性も高まり、お母さんと一緒に子供さんもカットできますので、収入も1.5倍になります。また固定客化していますから子供が大きくなってもお母さんはそのまま顧客として残りますし、その子供も大きくなれば大人料金でカットしてもらえます。
また、時短と言うことで、例えば会社帰りのカットであれば、カット後は帰宅するだけですから例えば最後のセットやシャンプーは必要ないかもしれません。それを予約時に「時短」と言う分類で予約してもらえれば、理解した顧客だけが予約するので苦情は起こりにくいと思います。
地域密着型で行なっている店舗であれば、これらは一つの戦略としては有効かもしれません。
また、高齢者層が多くターゲットにする場合、高齢者の方は一般的にコミュニケーションを求めている場合が多いと思います。病院でもおじいちゃんおばあちゃんが楽しそうに井戸端会議みたいなことをされてますし、お話が盛り上がるよう、ある程度年配の美容師を置くことで、その方とのお話目当てに固定客になってくれるのではないでしょうか。 ご年配の方はスマホではなく、紙媒体のポイントカードのようなものもお好きですので、10回で1回無料とか、紹介したら1回無料など、紙媒体のお得感を感じる年配独自の還元を行なっても良いかもしれません。年配独自のクチコミは意外と大きな影響力を持っています。
地域の人口動向などを見れば、同じ業態でも差別化はできると思います。如何に情報を収集し戦略を打つかが「価値の提案」であり、固定客獲得に繋がっていくと思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか。
まとめ
- 固定の顧客を確保するためには「そのお店じゃないと困る」という顧客ニーズを満足させる「戦略」と「価値」が非常に重要
- 店舗の地域の家族構成、年齢層、学生層など、その地域の特性を確認し、それに合った「価値の提案」を考える
- お店に「価値」があれば、その「価値」を求めて顧客が他店から流入する
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